今回は『サルくんとバナナのゆうえんち』をご紹介します。
この絵本は『100にんのサンタクロース』の作者の谷口智則さんの作品です。
谷口さんの作品は独特の空気感があり、どのページも絵画のいち作品でもよさそうなとてもすてきな絵で大好きなのですが、
この作品はお話の方もとてもすてきです。とても好きな絵本ですので、さっそくご紹介します。
基本情報
・作者:谷口 智則
・対象年齢:記載なし
(うちの子は3歳〜)
・ページ数:32ページ
・読み聞かせ時間:4分程度
絵本の内容・あらすじ
この絵本の主役はバナナを頭に乗せたコミカルな姿のサルくんです。
このサルくん、見た目はコミカルですが、気持ちはちょっぴり沈んでいます。
サルくんは森の中でひとりぼっち。何をするのもひとりぼっちで楽しくない。
そんなサルくんがひょんなことから、たのしいたのしい遊園地へ行くことに。
たくさんの動物たちと海賊船に乗ったり、ジェットコースターに乗ったり。
そんな楽しいはずの遊園地ですが、サルくんの表情はあまり変わりません。
そして、そんなサルくんの視線の先にはもうひとり浮かない表情をしたウサギさんの姿が。
サルくんとウサギさんがとっても大変なことになってしまいます。
そして、最後にサルくんが得たものは…。
この絵本のいいとこ
絵がすてき
上にも書きましたが、この本はとてもすてきです。
サルくんもそうですが、他の動物たちや遊園地などの建物も、どれもがいちいちかわいらしい。
でも、それがただのかわいいではないんです。この絵本も全体としては少し暗めの色味で描かれています。
それはサルくんの内面がにじみ出ているのか、単にそういう雰囲気を出しているだけなのか、詳しいことはわかりませんが、
「あ、かわいー」の一言で済ませられるものではないんです。なかなか説明できないので、ぜひ見てみてください。でも、かわいーのはかわいーんですけど。
ストーリーもすてき
「 絵本の内容」で書きましたが、この絵本はちょっと不思議ですがお話もすてきです。前半部は遊園地で遊ぶサルくんが、そして、後半部分は大切なところなので、あまり書きませんが、サルくんががんばります。あんまりやる気のなかったサルくんががんばるんです。
バナナの使い方
この絵本では“バナナ”とても重要な役割を果たします。
サルくんの頭に乗っかっていたバナナは、最初は単なるユーモラスな姿を描くための道具かと思っていましたが、
ページをめくるうちに、その重要性がわかってきます。
バナナはサルくんにとって大切なものです。少し誇張してみると人間でいうお金のようなものかもしれません。
実際サルくんは遊園地でお金の代わりにバナナを渡してアトラクションに乗ることになります。
大切なものと引き換えに、楽しい時間を手に入れるのです。
もちろんバナナは何かするたび1本ずつ減っていきます。
そして、いよいよバナナは最後の1本に。
その1本をサルくんは何にどう使うのか…?
「絵本の内容」ブロックで最後に書いた、「そして、最後にサルくんが得たものは…。」
という箇所とリンクする形で話は収束します。
何かを得るには何かを犠牲にしたり、何かと交換しなければならないか?そんなことないのか?と、そんなことを考えさせられました。
まとめ
この絵本は一見、コミカルでユーモラスに見える絵本です。しかし、読んでいくと、その内容の深さにいろいろなことを考えさせられます。そんなことを作者は意図していないのかもしれません。
でも、絵本に限らず、本の読み方は自由なはずです。簡単な絵本から難しいことを教えてもらったり、考えるきっかけになることもあっていいはずです。いや、実際に絵本を読んでいるとそんな発見はたくさんあります。
ただ、それを別に子どもに押しつける必要もないと思います。子どもは子どもで自由に読む。言葉が少なく、行間が広い絵本は、みんなが好き勝手に想像する隙間もたくさんあるように思います。だから、みんなさんも自分勝手に絵本を読んでいきましょう!
ですので、ここまで読んでいただいてありがたいのですが、興味を持たれた方はまずはすぐに『サルくんとバナナゆうえんち』を読んでいろいろ想像してみてください!